Studio Stick(以降S):今日はよろしくお願いします
浅沼さん(以降A):このままでもいいですか?(軽作業中)
● 深いんです。
S:えっとまず、ガラスという素材を扱っていらっしゃるので、その辺から。
ガラスに興味を持ったのはいつですか? きっかけとか。
A:・・・ん? え、はい。(軽作業中)
S:いやだから、ガラスに興味を持ったきっかけがあれば教えて?
A:あぁ。すごい昔です。
S:すごい昔って、子供のときですか?
A:それは行き過ぎですよ、せいぜい高校生ですよ。
S:・・・で、高校生のとき何があったんですか?
A:夏休みにね、今はなき下町の町工場にフラッといってみたんです。一人で。
そこで、初めて吹きガラスの制作風景を見たんですけど、
なにしろものすごく暑いのと、やわらかいものが膨らんでいく行程が楽しくて。
それですかね。
S:ふむふむ。
A:で、今ガラス作品を制作し続けているのは、ピカソだったかな?
「絵画とは事実を伝えるためのウソである」っていう言葉?
それがガラスにリンクしたっていうか?
S:ふ、深いっすねぇ。
A:はい、深いんです。
S:ピカソが出てきましたけど、他に影響を受けた人とか、好きな人はいますか?
A:こういうのって急に言われても出てこないんだよなぁ。うーん。。。
S:お父さんとかでもいいんですよ。
A:あ、作曲家のドビュッシーですかね。すごく無機質なんです。
アラベスクから入ったんですけど、特にこれっていう曲はなくて、
その時々によって聴きたくなる曲は変わります。
S:ドビュッシーは他の作家さんでも好きだという人多く聞きますね。
A:あと私、今まで沢山のガラス作家の工房でアシスタントをさせていただいてるんです。
その人たちからも、やっぱり影響受けてます。
中でも高橋さん(高橋禎彦氏:多摩美術大学工芸学科ガラスプログラム准教授)
の影響は強いかもしれません。
S:なるほどー。色んな人のアシスタントを経て、今の浅沼さんがいるんですね。
A:そうなんです。
●だらしないんですよ!
S:質問は変わりますが、今かっこいいと思う人って誰ですか?
A:!(軽作業をやめる)
S:どうかしましたか?
A:そりゃぁ宮田泰地さんでしょ〜
S:宮田さんといえば、ここStickでも扱わせてもらっていますね。
長身のハンサムボーイ、通称ミスターパーフェクトです。
A:だってかっこいいもん。やさしいし。
S:彼のことは皆すきですよ。好きといえば、他にどんなことをするのが好きですか?
A:そうですね、ドライブとか料理とか(お菓子は入らない)、植物を育てることとか?
S:植物は、今回の展覧会でも花器に似合う枝ものや花が素敵ですね。
A:花を咲かせたり枯れていったりと、変わっていくからが好きなんです。
あ、でも数年前に買ったセロームは大きくなりすぎましたけど。
このくらい(20cmくらい)だったのが、こんなに(両手を広げたくらい)大きい葉っぱに
なっちゃったんですよ。うざいったらないですよ!
S:(笑)そんなに成長するものなんですね。どこに置いてるんですか?
A:以前住んでいたアパートでは、ベッドの横においてたんですけど、
6畳間の半分はその植物に支配されていて、寝てるとビョーンってかぶさってくるんです。
しかも上に伸びないで横に葉っぱが大きくなるから、下にダラーンとなって。
だらしないったらないですよ!
あ、どこに置いているかでしたっけ。今はアトリエに置いてます。
●テイストの違う人たちが集まるって面白い
S:アトリエはどちらですか?
A:相模原です。6人で借りてます。
S:6人で共有ですか、多いですね。全員ガラス作家の方ですか?
A:いえ、えーとガラスは4人? 3人? あと染織が2人?
色んなことやっている人もいるし。。。え、結局何人?
S:知りませんよ(笑) 吹きガラスもそちらでやるんですか?
A:いえ、それは今山梨にある個人工房の設備を借りてやっています。
学生のころから貸してもらっているから勝手が分かるし、作家不在のときが多いので、
一人で黙々と作業できるんです。
S:よく何人かでレンタルできるのは聞きますが、一人でできるのは良いですね。
山梨までは車ですよね? そういう道中でドビュッシーなんかを聴いたりするんですか?
A:ドビュッシーひっぱりますねぇ。
S:自分で好きって言ったじゃないですか(笑)
まぁいいです。じゃぁ、吹きガラスの作業は一人でして、それ以外をアトリエで?
A:そうですね、加工とかは出来るようにしています。
S:6人もいると、メリットもいっぱいありそうですが、デメリットもあったりします?
A:とにかくものが多い、狭い。器つくる人は在庫持ちが多いでしょ。
S:あぁ、共同スペースでは皆が意識してないとそういうことになっちゃいますよね。
A:まぁ、話し合いで大丈夫になりますけどね。
S:メリットはやっぱり「人」ですかね?
A:ですね、テイストの違う人たちが集まるって面白いです。交友関係も広がっていくし。
●制作に集中できた時間
S:テイストの違う人たちが集まってくる場所といえば学校です。
浅沼さんは今年の3月まで芸大(取手)の研究室に勤務されていました。
取手ではどんな生活を送っていたんですか?
A:は? 生活? そうですねぇ、、田んぼが多かったですね。
S:あ、景色が。
A:とにかく何もなかったですよ。あぁ! サギサギ! 白サギがいましたよ。
他にもウコッケイ、タヌキ、ノウサギ、イタチとか。
S:野生動物の研究もできそうですね。
A:よく散歩はしてましたね。あとは工房にいました。
S:ストイックですねぇ。じゃぁもう本当に制作に没頭するというか、そういう生活だったんですか?
A:そうですね。遊ぶところもないので、制作に集中できた時間だったと思います。
共通工房っていうところの中に、ガラス工房も入っていたから、
制作していると全然知らなかった色んな人と知り合いになれましたね。
S:人との出会いという財産をそこでも着実に増やしたわけですね。
でもじゃぁ、遊びたい衝動っていうのがものすごく溜まってたんじゃないですか?
A:そうなんです。だから、今年は旅行をいっぱいしました。
トルコ、ドイツ、チェコ、スコットランドに行きましたね。
S:いいですねぇ。他には?
A:あとはアメリカに1ヶ月ほど勉強しに行きました。
S:大充実してますねぇ。
A:えぇ、まぁ。
●火の玉が飛んで来た!
S:そんな浅沼さんに、衝撃的なエピソードがあるそうですね?
A:あぁ、カチカチ山ですか? ははは、初めて聞く人はドン引きですよ(笑)
S:カチカチ山って、うさぎが狸に火つける話ですよね?
A:私はうさぎに火をつけられたんじゃなくて、火の玉が飛んできたんですけどね。
S:火の玉が飛んできたんですか?!
A:そういう風に見えたってことです。ずっとこもって作業してて、疲れとかもあって、
色々麻痺してたみたいで、最初背中が燃えてるって分からなくて。
S:え、で、気づいて自分で消火したんですか?
A:水かぶりました。
ちゃんと防火のために上下綿100%の作業着だったので、小範囲でおさまって。
S:はわぁぁぁ、、、救急車で病院まで?
A:いえ、溶解炉のことがあったので、同じ研究室の同僚を呼びました。
待ってる間に自分で電話して、受け入れてくれる病院を探しました。
S:それから即入院を?
A:そうなんですよ、約20日間も! あれは凹みましたねぇ。
S:学校業務を休まなくてはいけないですもんね。
A:ううん、お母さんが買って来たパジャマが、ピンクのくまのパジャマで。
S:(笑)
A:しかも、入院の半数以上は院内感染の重度の風邪なんですよ!
S:病院なのにそんなんで入院長引いて、、、そりゃ凹みますね。
A:でしょ? 更にその病院、老人ホームと墓場に挟まれてるんです。
S:図式すると何故か不吉ですね。。。
A:だからものっすごい具合悪かったけど「元気です!」って言い放って、
無理矢理退院しました。
退院したら、友人たちから「My 消化器」をプレゼントされました(笑)
●月々5万円の無駄遣いができるように
S:すごい展開になりましたが、読者の皆さんついてきていらっしゃってるでしょうか?
ここで、今回の展覧会作品について少し伺おうと思います。
まずこのキャンディーカラーが目をひきますね。
A:ここ最近はこういう感じですね。
S:色はどういう風にきめていくんですか?
A:形にあう色を選んでいます。自分で紙等に着色してイメージすることもあるし、
売られている色の中から選ぶこともあります。
S:花器の形はそれぞれ花を生けやすいように考えているんですよね?
A:そうですね。使うときの組み合わせを考えながら作っています。
S:最後に、これからどうなっていきたいっていうビジョンはありますか?
A:とりあえず続けていきたいです。自分にとって「作る」ことは本当に好きだから。
S:作風もこだわることはせず、できることを習得しながら新しいことにも
挑戦していきたいですか?
A:うん、続けていくことで、スタイルにとらわれずに色々出来る人になりたい。
S:続けていくために、色々大変なことも多いと思いますが。
A:ガラスは原価も高いし、設備の使用などでやはりお金がかかってしまいますからね。
でも、それでも。
S:清々しくて素敵な姿勢ですね。ものづくり仲間がそうあってくれることは、
とても心強いです。
A:どうなっていきたいか、分かりました!
月々5万円の無駄遣いができるようになる!(笑)
S:それ、最高ですねぇ(笑)
2009年12月15日